【教案】~すぎる-みんなの日本語第44課
導入
男の人は昨日、友達といっしょに飲みに行きました。たくさん飲みました。
今、頭がとても痛いです。
飲みすぎて、頭が痛いです。
女の人は子コーヒーを飲んでいます。コーヒーは冷たいですか、温かいですか。
とても熱いです。
とても熱いですから、飲めませんね。
熱すぎて、コーヒーが飲めません。
おじいさんが困っています。
おじいさんはスマートホンの使い方がわかりません。
スマートホンは機能がたくさんありますから、操作が複雑です。
複雑すぎて、スマートホンが使えません。
意味
とても~。
非常に〜だ。
※程度が水準を超えていることを表す。
接続
1)Vます+すぎる
例)食べます+すぎる⇒食べすぎる
飲みます+すぎる⇒飲みすぎる
寝ます+すぎる⇒寝すぎる
2) い形容詞い+すぎる
例)甘い+すぎる⇒甘すぎる
暑い+すぎる⇒暑すぎる
眠い+すぎる⇒眠すぎる
3) な形容詞な+すぎる
例)暇な+すぎる⇒暇すぎる
有名な+すぎる⇒有名すぎる
簡単な+すぎる⇒簡単すぎる
例文
1. 今の会社は給料が少なすぎるので、転職をしようと思っています。
2. 食べ放題で食べすぎてしまい、お腹が痛いです。
3. この料理は辛すぎて食べることができません。
4. 部屋が狭すぎて、ソファを置くことができません。
5. 子どものころ、ゲームをしすぎて、目が悪くなってしまいました。
6. カラオケで歌いすぎて、のどが痛くなりました。
7. 授業が簡単すぎてつまらないです。
ポイント
「~すぎる」は主に話し手のマイナスの評価を表す。
上記の例文を見てもらうと、すべてネガティブなニュアンスが含まれていることがわかります。
そのため、プラスの意味を持つ「元気」「まじめ」「きれい」「良い人」などの単語もマイナスの意味になります。
1. この問題は簡単すぎます。
→とても簡単でつまらないです。
2. 元気なのはいいことなんですが、うちの子たちはときどき元気すぎて困ります。
→とても元気なので、うるさいです。
3. うちの夫、いい人すぎて…。
→うちの夫はお人よしです。
「~すぎる」のイマドキの用法
私たちネイティブ・スピーカーが使う最近の「すぎる」の用法には、ネガティブなニュアンスがないものがあります。例えば「〇○が大好きすぎる」「欲しすぎる」「楽しみすぎる」「ステキすぎる」「激かわすぎる」「ツボすぎる」「すごすぎる」「天才すぎる」などなど。テレビを見ていたり、ブログを読んでたりすると、「ん?最近ではこんな言い方もあるんだ~」と思うような、なかなか面白い表現がチラホラ出てきます。
他にも↓
「定番のおいしすぎるレシピ」
「天使すぎるアイドル橋本環奈」
「青春過ぎるマンガ」
どうでしょうか?
「ヤバすぎる!!」は文脈によってはポジティブにもネガティブにもなり得ますよね。
では、なぜこのような用法が使われるようになったのでしょうか。
きっと既存の語彙、表現では収まりきれない感情を何とか相手に伝えようとした結果なのかもしれません。
現代は特にインパクトのあるものが尊ばれる時代ですからね。
「~すぎる」は本来好ましくない場合に使われますが、日本語を教える際には「最近はこんな使い方もあるんだよ」と教えておいてあげると、学習者がこういった表現を見つけた際の混乱を防げるかもしれません。
あなたならどうする?
では、学習者が次のような例文を作った場合、みなさんならどうしますか?
「日本語を勉強しすぎて、(日本語が)上手になりました」
ネイティブスピーカーの私たちなら、すぐに「あれ…?」と思いますよね。ちょっとしっくりきません。でも、どうして?
******************
この学習者さんは「たくさん勉強する」=「勉強しすぎる」と捉えたためにこのような文を作ってしまったんだと思います。いくら巷で「~すぎる」が良い意味で使われるようになってきたとはいえ、好ましくない場合に使われるのが一般的です。
「日本語を勉強しすぎて、頭が痛くなりました」
「日本語を勉強しすぎて、(日本語が)嫌いになりました」
など、マイナスの意味で使われることを再確認したあとで、学習者さんの作った文はプラスの意味だから、どうすればいいのか考えさせるといいかもしれません。
「日本語をたくさん勉強したおかげで、(日本語が)上手になりました」
どうでしょうか?
*******************
学習者のレベルに応じてどこまで教えるかは判断したほうが良いと思いますが、日本語を教える立場としては「~すぎる」の現代用法も把握しておくことは大切かと思います。
そうしないと、いきなり質問されて説明に困りますからね(経験者)。
練習
1. 「~すぎる」に変換してください。
【動詞】
する / かう(買う) / うたう(歌う) / よむ(読む) / タバコをすう(吸う) / つくる(作る) / あそぶ(遊ぶ)
【い形容詞】
あつい(暑い) / さむい(寒い) / にがい(苦い) / あまい(甘い) / からい(辛い) / みじかい(短い) / とおい(遠い) / たかい(高い) / つまらない / いそがしい(忙しい) / おおい(多い) / きたない(汚い) / おそい(遅い) / さびしい(寂しい) / うるさい
【な形容詞】
しずかな(静かな) / ひまな(暇な) / ふべんな(不便な) / へたな(下手な) / たいへんな(大変な)
2. 絵を見て「~すぎる」を使って話してください。
私が作った絵カード(全11枚)⇒ みんなの日本語44課(すぎる)
みんなの日本語の教材(私が作成したもの)⇒ みん日教材(26~50課)
この文型が扱われている教科書
私がこの文型を教えるにあたってよく使っている教科書を中心に載せてます。
GENKI第12課
⇒書籍紹介はこちら。GENKIはイラストを多用した練習、ペアワークやグループワーク形式のロールプレイやゲームなどのアクティビティが充実しているので、練習問題だけ使うのもおすすめです。
⇒書籍紹介はこちら。扱われている文型一覧もあるので、興味ある方はぜひ読んでみてください。ちなみに、「絵で導入・絵で練習」の「すぎる」に関するイラストは全部で10枚あります。新米日本語教師だったときにかなり役に立った1冊なので、これから日本語教師を目指す方はぜひ購入しておくことをおすすめします。
⇒書籍紹介はこちら。初級のレベルで扱われる文法の練習問題が90あります。私は必要な文法のページだけを宿題に出してます。会話文や文章を読んで、全体の流れを把握し、意味を理解した上で、目標の文型を使って答えるような、文脈・意味重視の練習問題なので、難易度は高めです。
当ブログでもロシア語話者向けに「ておく」の文型をロシア語で説明しています。
⇒【JLPT 4】конструкция ~すぎる – слишком
いろいろな例文を載せているので、教案づくりの参考にしてください。
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