【日本語の使いわけ】「来る」と「行く」の違いは?
学習者の中で誤用が多いのが、こちらの「来る」と「行く」
まずは私が「あれ?」と思った学習者の間違いを紹介します。
高橋:ナスチャさん、今日大学を休んでましたが、大丈夫ですか?明日は来られそうですか。
ナスチャ:高橋先生、申し訳ありませんでした。ちょっと体調を崩してしまって…。明日は来れると思います。
(翌日、授業後)
高橋:ナスチャさん、まだ体調悪そうですね。無理しないでくださいね。
ナスチャ:ありがとうございます。大分よくなったので、明日も授業に行きます。
日本語初級レベルで勉強する「来る」と「行く」(みんなの日本語なら第5課、げんきなら第3課)ですが、一見簡単そうに見えるけど、実はこれが難しいんですよね~。混同している学習者さんがけっこういます。特に母語干渉による誤用が多いので、これまた厄介。初級のうちからしっかり使い方を教えて間違いを指摘してあげないと、化石化が起こってしまい、誤用が定着してしまいます。
教えるほうもしっかり頭の中で整理していないと、なかなかうまく説明できません。
ネイティブならなおさら(はい、自分のことです…笑)。
質問を受けたときに、「え、いや…まぁ、日本語ではそうだから」のような曖昧な回答にならないように、今日はこの2つの違いを解説していきます。
できるかチェック
まずは恒例の「できるかチェック」。
下の文を読んで、「来る」か「行く」か選んでください。
山田:ジョンさん、何時ごろ家に(来ます・行きます)か。
ジョン:ええと、今スーパーで買い物が終わったので、これから(来ます・行きます)。多分15時ごろに着くと思います。
ジョン:あ、もうこんな時間ですね。家に帰る前に図書館に(来なければ・行かなければ)ならないので、そろそろ…。
山田:これから(来る・行く)んですか?それじゃ、早く(来ない・行かない)と。今日は来てくれてありがとうございました。それじゃ、気を付けて帰ってください。
ジョン:ありがとうございます。お邪魔しました。
ジョン:図書館で本も返したし、もう遅いから、家に帰ろう。
↓
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解答
山田:ジョンさん、何時ごろ家に(来ます・行きます)か。
ジョン:ええと、今スーパーで買い物が終わったので、これから(来ます・行きます)。多分15時ごろに着くと思います。
ジョン:あ、もうこんな時間ですね。家に帰る前に図書館に(来なければ・行かなければ)ならないので、そろそろ…。
山田:これから(来る・行く)んですか?それじゃ、早く(来ない・行かない)と。今日は来てくれてありがとうございました。それじゃ、気を付けて帰ってください。
ジョン:ありがとうございます。お邪魔しました。
ジョン:図書館で本も返したし、もう遅いから、家に帰ろう。
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ネイティブなら、さささっとできると思います。
では、どうしてそうなったのでしょうか?
日本語で「来る」と「行く」どちらを使うか考える上で重要なポイントは、話し手が今どこにいるのかなんです。
「来る」VS「行く」
まずは、両者の基本的な意味を見てみましょう。
行く:話し手が今いるところから別の場所へ移動するときに使う。
来る:話し手がいる場所へ誰かが移動するときに使う。
他の言い方をすると、話し手から遠ざかるのが「行く」、話し手に近づいてくるのが「来る」なんですが、わかるようでわかりませんよね。正直、私もこれだけでは「え?ん?」となってしまいます。
では、イラストを使って解説していきます。

日本語の世界では「行く」と「来る」の使う際に、話し手が今どこにいるのかを考えなければなりません。ここでの話者は山田さんです。山田さんは今自宅にいて、ジョンさんにいつ家に来るのかを聞いています。
つまり、話者である山田さんのところにジョンさんが移動するので、「来る」が使われています。
では、次を見てみましょう。

ここでは、ジョンさんが話者です。ジョンさんは今スーパーにいて、買い物が終わったので、これから山田さんのところへ向かうと話しています。
つまり、話者であるジョンさんがこれから今いるところから別のところに移動するので、「行く」が使われているんです。
では、最後です。

もうおわかりですね。
今2人とも山田さんの家にいて、ジョンさんはこれから今いる現在地から図書館へ移動するので「行く」となります。
では、冒頭の学習者の誤用をもう一度見てみましょう。
高橋:ナスチャさん、今日大学を休んでましたが、大丈夫ですか?明日は来られそうですか。
ナスチャ:高橋先生、申し訳ありませんでした。ちょっと体調を崩してしまって…。明日は来れる→行けると思います。
(翌日、授業後)
高橋:ナスチャさん、まだ体調悪そうですね。無理しないでくださいね。
ナスチャ:ありがとうございます。大分よくなったので、明日も授業に行きます→来ます。
大切なのは、話者がどこにいるか。
前半は文脈から、高橋先生が大学にいて、ナスチャさんが自宅にいることがわかりますね。
高橋先生はナスチャさんに、明日大学(つまり話者である先生がいる場所)に来れるかどうか聞いているので、「来られそうですか」と聞いています。一方、ナスチャさんは発話の際、自宅で休んでいました。そして、明日は授業に出ることを伝えています。つまり、現在の場所から別の場所に動くので、「行く」を使わなければなりません。
後半ですが、高橋先生もナスチャさんも教室にいると仮定すれば…もう説明は要りませんね?
理解度チェック
では、最後にもう一つ問題を解いてみましょう。

ジョンさんは日本に留学していましたが、留学期間が終わり国へ帰りました。そして、日本滞在中に仲良くなった山田さんをアメリカに誘います。
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解答はこちら

話者であるジョンさんは、現在アメリカにいます。そして、日本にいる山田さんにいつ移動するか聞いているので、「来ますか」が正しいですね。

一方、日本にいる山田さんは9月に日本を離れてジョンさんの住んでいるアメリカへ移動します。今いる場所から離れるので、「行きます」となります。
どうでしょうか?
練習問題
「来る」か「行く」か適切なほうを選びなさい。
1. A:ねえねえ、今日暇?
B:今日?うん、授業のあとは何もないけど…?
A:それじゃ、一緒に映画を見に(来ない・行かない)?
B:いいね!
2. (電話で)
A:もしもし、B?
B:うん、そうだけど。どうしたの?
A:あのさ、今日の授業なんだけど、ちょっと体調悪くてさ…。
B:欠席?
A:うん、大学に(来る・行く)のは難しそう。だから、あとでノート貸してくれない?
B:もちろん。それじゃ、先生にも伝えておくね。
A:ありがとう!
3. (居酒屋で)
A:あれ?Cさんがいないね。もう予約の時間なのに。
B:あ、本当だ。ちょっと電話してみますね。…あ、もしもし、Cさん?…あ、遅れる?わかった、Aさんに伝えておくね。
A:何て言ってた?
B:それが、急な仕事が入っちゃったようで…。それが終わり次第こちらに(来る・行く)そうです。
4. 私は2012年にロシアのリャザンという町に(来ました・行きました)。今年で在住歴14年目です。
5. 母:晩ごはんできたわよーー!!
子どもたち:はーい!今(来る・行く)ー!!
↓
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解答
1. A:ねえねえ、今日暇?
B:今日?うん、授業のあとは何もないけど…?
A:それじゃ、一緒に映画を見に(来ない・行かない)?
B:いいね!
2. (電話で)
A:もしもし、B?
B:うん、そうだけど。どうしたの?
A:あのさ、今日の授業なんだけど、ちょっと体調悪くてさ…。
B:欠席?
A:うん、大学に(来る・行く)のは難しそう。だから、あとでノート貸してくれない?
B:もちろん。それじゃ、先生にも伝えておくね。
A:ありがとう!
3. (居酒屋で)
A:あれ?Cさんがいないね。もう予約の時間なのに。
B:あ、本当だ。ちょっと電話してみますね。…あ、もしもし、Cさん?…あ、遅れる?わかった、Aさんに伝えておくね。
A:何て言ってた?
B:それが、急な仕事が入っちゃったようで…。それが終わり次第こちらに(来る・行く)そうです。
4. 私は2012年にロシアのリャザンという町に(来ました・行きました)。今年で在住歴14年目です。
5. 母:晩ごはんできたわよーー!!
子どもたち:はーい!今(来る・行く)ー!!
授業のヒント
「行く」「来る」はみんなの日本語第5課、げんき第3課の学習項目です。げんきは第3課の終わりに表現ノートというコラムがあり、そこで「行く」と「来る」の使い分けについて英語で解説されてありますが、みんなの日本語の別冊文法解説には、残念ながらそれには触れていません。
そのため、授業で使い分けについて触れない限り、正しく使い分けができるようになるのは難しいと思いますし、中級レベル以上になってくると、今度は「ていく」「てくる」という文型も出てくるので、初級の段階で正確に使えるようになるのはとても重要です。
まずは、日本語教師である私たちが使い分けをしっかり理解すること。
そして、授業ではイラストを使ってわかりやすく教えてあげること。
媒介語を使ってもOKです。
おすすめ書籍
→比較的新しい書籍です。イラストで助詞をイメージしやすくなっています。独学で使うこともできるし、授業で取り入れることもできます。書籍紹介はこちら。
なお、みんなの日本語第5課の<場所>へ行きますの教案はコチラ。


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