初級レベルの読解では、言葉の意味や文法に注目して精読することが多いと思いますが、中級以降でもその読み方のままでは読解力は伸びません。
本日ご紹介するのは「内容指向」の読み方で、日本語がすばやく正確に読めるようになる『中・上級者のための速読の日本語』です。
商品広告、本の目次、宅配ピザや居酒屋メニュー、新聞・ネット記事、小説など、100を超える多彩な生教材を使用し、学習者が段階的に速読の技術を養えるようになっています。
【書籍紹介】『中・上級者のための速読の日本語』
どんな本?
広告、目次、メニュー、記事、小説などの生教材を使って、情報の読み取り(スキャニング)と大意の把握(スキミング)を練習しながら、すばやく正確に日本語を読み取る力を養うことができます。
なお、『中・上級者のための速読の日本語』は上級の学生(大学レベルの日本語教育を300時間以上受けた学習者)が対象なっています。
本の構成
『中・上級者のための速読の日本語』は3部構成です。
- 第I部 基本技術編(66問):「内容指向の読み」の基本をみがく
- 第II部 実践編(35問):生教材で実力をつける
- 第III部 挑戦編(4問):「ショートショート」4編で力試し
第I部では、まずスキャニングの技術を使うタスク(ランダムに配置された数字を探す、水族館の利用案内を見ながら利用条件を選ぶ等)、スキミングの技術を使うタスク(名詞を修飾している語句を選んだり、内容を予測する練習等)、そして両方の技術を同時に使うタスクが用意されています。基本技術編は、日本語のスキャニングとスキミング技術を高めるためのおもしろい練習が用意されています。
基本技術編で速く読むコツをつかんだら、次は実践編です。実践編では、新聞や雑誌、記事などの生教材を使って、情報を速くつかみ、重要なポイントだけ理解する練習をします。
日本語学習者用に手を加えたりは一切されてませんが、難易度は段階的に上がっていくように作られています。
最後の挑戦編では、星新一の『ショートショート』や短編小説を読んで、実力を試せるようになっています。
バラエティに富んだ内容の練習問題となっているので、学習者はいろいろな生の読み物に触れることができます。
使ってみた感想
1つ1つが3~5分の読解になっているので、授業のウォーム・アップに最適です。学習者は普段、精読をしているため、一から丁寧に順を追って読むことが大事と教え込まれています。そのため、最初は「時間内に終わらない」「わからない語彙がある」等、ブーブー文句を言ったり、タスクに戸惑うこともありますが、自分の母国語で何か情報を探すときのことを考えさせ、前後から類推したり、わからない部分を推測したり、先を予測することの大切さが速読に必要不可欠だということを説明すれば速読の意味を理解してくれます。
私は速読の練習を始める前に、ロシア語検定試験の読解問題を学習者に解かせています。そして、どのように必要な情報を探しているか質問するところから始めています。これにより、スキャニングとスキミング技術が速読に必要不可欠な技術であることを学習者自身が認識することができます。
授業の最初にウォーム・アップとして使えば、少しずつ速読に必要な技術も養えますし、学習者自身がゲーム感覚で問題に取り組めているので、個人的にかなりおすすめです。
最後に
読解と聞くと、中学校や高校の英語教育での精読を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、必要な情報を素早くつかんで理解するためには、速読が必要不可欠です。日本語教育で速読に特化した教材は少ないのが現状ですが、日本留学を目指している学習者はもちろん、N2対策にも使えるので興味のある方は是非購入を検討してみてください。
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